シコウスル森のなかま
第13話「大きな体、小さな声」
雪解け。谷の川の水が日ごとに増え、つぎはぎ橋を急いで直すことになりました。
橋の下をのぞいたクマくんは、茶色の板の裏が黒く腐っているのに気づきます。けれど、言いかけたその瞬間、川の氷が割れて、ハリネズミさんがびっくりして丸くなりました。
「……なんでも、ない」。
考えて、やってみる。やってみて、また考える。
大きな体の、小さな声を、みんなで待って聞くお話です。
台本を読む(字幕・全59行)
- 森の奥に、こもれび谷という、小さな谷があります。
- 谷の奥の、丸太の家に、八人のなかまが、暮らしています。
- 考えて、やってみる。やってみて、また考える。
- 正しいことほど、言い方に困る。そんな森の、なかまたちのお話です。
- シコウスル森のなかま。
- 雪解け。谷の川の水が、日ごとに、増えていきました。
- つぎはぎ橋は、三代にわたって、板を継ぎ足してきた橋です。
- タヌキ水がいちばん高くなるのは、五日後だってさ。それまでに直してくれって、谷の大人たちが
- リス五日! じゃあ、明日から始めよう
- クマ……あの
- ハリネズミ……あら、やだ。……なにか、言った?
- クマ……ううん。なんでも、ない。
- ウサギ灰色の板が、十四枚。いちばん古い板から、替えます。
- タヌキだよね。見た目がぼろい板から、抜けるんだよ。新聞にも、そう書いてあった
- リス新しい板は、薪小屋の裏に、あるよね。運ぶのは……
- タヌキクマくんでしょ。一回で、何枚も運べるし
- リスじゃあ、決まり! 明日の朝から
- ウサギクマくん、いいですか。
- クマ……うん。
- アナグマ灰色の板、意外と、かたいですね
- キツネ……うん。古い木のほうが、詰まってるんだ。
- 灰色の板は、二日で、ぜんぶ、新しくなりました。
- タヌキいやあ、早かった。これなら、谷の寄り合いでも、胸を張れるね
- リス最後に、クマくんが渡って、おしまい!
- タヌキ……い、今の、クマくんが重すぎたんじゃない? ほら、いちばん大きいし
- クマ……うん。
- ウサギクマくん。この二日、何度も、橋の下を見ていましたね。
- ウサギ何を、見ていたんですか。
- クマ……下。
- タヌキえ? 何? 川? 川が、どうしたって?
- クマ……なんでも、ない。
- その夜。話し合いは、暖炉の前で、することになりました。
- リス今夜は、これを持った人が、一言だけ。順番に。……わたしから
- リス急ぎすぎた。
- アナグマ縄。……手すりの縄が、ゆるんでました。言えば、よかったです
- ハリネズミ氷。……あの日、わたしが丸まったのは、氷の割れる音よ。クマくんの声じゃ、ないわ
- タヌキ……早く、すんだ。すみすぎた。
- ウサギ数えやすい板を、数えました。
- キツネ……ぼくは、次で。
- クマ……板。
- リスこの板か、この板か。どっち?
- ウサギ上は、きれいなのに。
- クマ……下から、腐る。下の梁に、水が溜まって。川下で、見たこと、ある。
- ウサギ話し合いのとき、クマくんは「うん」と言いました。わたしは、賛成の「うん」だと、思っていました。
- クマ……反対、だった。でも、ぼくの声、大きいから。
- ハリネズミ大きくて、いいのよ。聞こえるもの。
- ウサギ梁を替えるなら、橋は、二日、通れません。
- タヌキぼくは、反対。二日も止めたら、谷じゅうから、文句が来るよ
- タヌキ……でも、決まったなら、ぼくが、谷に知らせて回る。
- リスじゃあ、梁から。クマくん、どう?
- クマ……うん。
- ウサギいまのは、賛成の「うん」ですか。
- クマ……賛成の、うん。
- キツネほんとだ。上から見てたら、わからなかった。
- クマ……持とうか。梁
- 水がいちばん高くなる前の日、つぎはぎ橋に、新しい梁が入りました。
- アナグマ渡れましたね!
- クマ……ぼくじゃ、ない。
- ハリネズミ……知ってるわよ。
