シコウスル森のなかま
第14話「重なるところ」
春。谷の寄り合いから、キツネくんに「つぎはぎ橋の直し方を、若い子たちに教えてほしい」と頼みが来ます。
けれど、キツネくんが本当にやりたいのは、冬じゅう夜にこっそり続けてきた木彫り。自分にやれるのは「何でも少しずつ」だけで、それを半端だと思っています。
風見の丘で、リスさんが地面に三つの丸を描きました。やりたいこと、やれること、求められること。
考えて、やってみる。やってみて、また考える。
三つの丸の重なるところを探す、シーズン2の最終話です。
台本を読む(字幕・全58行)
- 森の奥に、こもれび谷という、小さな谷があります。
- 谷の奥の、丸太の家に、八人のなかまが、暮らしています。
- 考えて、やってみる。やってみて、また考える。
- 正しいことほど、言い方に困る。そんな森の、なかまたちのお話です。
- シコウスル森のなかま。
- 春。谷の雪はすっかり消えて、丸太のコテージのまわりにも、若い草が伸びていました。
- その朝、谷の寄り合いから、タヌキくんが、頼みごとを持って帰ってきました。
- タヌキキツネくん、名指しだよ! 谷の若い子たちに、橋の直し方を、教えてほしいって。
- キツネ……ぼくが? 教える?
- ウサギ妥当です。雪解けの補修で、板を打ち直したのは、キツネくんですから。
- キツネ……少し、考えてもいい?
- キツネ灰色の板は、ずっと前の。茶色は、その次。白いのが、この雪解けの。……打ち方が、少しずつ違うんだ。
- クマ……音で、わかるの?
- キツネ水車の軸と、同じ。中が傷んでると、鈍い音になる。
- アナグマすごいなあ。それ、若い子たちに、そのまま話せばいいんですよ!
- キツネ……ぼくのは、何でも少しずつ、だから。前に、便利だねえ、って言われてたでしょう。便利って、たぶん……半端ってことだよ。
- クマ……持とうか。
- ハリネズミまだ起きてると思った。麦湯、温めてきたわよ。
- ハリネズミ顔に、書いてあるわよ。ほんとは、そっちが、やりたいんでしょう。
- キツネ……橋より、こういう小さいのを、ずっと彫っていたいんです。でも、誰にも、頼まれてない。
- ハリネズミふうん。……あしたは、晴れるって。丘で、お昼にしましょうか。みんなで。
- 去年の春に立て直した風見が、今年も、谷の風を受けて回っていました。
- リスじゃあ、一人ずつ。やりたいこと、やれること、頼まれること。自分はどのへんか、石を置いてみて。
- タヌキぼくのやりたいのは、立派なまとめ役。やれるのは……新聞を、隅まで読むこと。
- ウサギ頼まれているのは、呼び鈴に出ることですね。
- ウサギわたしは、数えるのが好きで、得意です。頼まれるのは、数え直しばかりですが。
- アナグマぼくは、やりたいのが多すぎて……石、三つ置いてもいいですか。
- リス一つ!
- クマ……運ぶのは、やれる。……ほかは、まだ、わからない。
- リス……真ん中、誰も、いないね。
- ハリネズミそんなものよ。わたしなんて、昔は、お菓子の職人に、なりたかったんだから。
- アナグマわあ……これ、ハリネズミさんが?
- ハリネズミ前の組で、大勢のお腹を満たす番に回されてね。……そうしたら、わたしの腕は、そっちで要るんだって、わかったの。
- ハリネズミでも、お菓子も、ときどき焼くのよ。こうして。
- キツネぼくは……どこにも、ちゃんとは、入らないや。
- アナグマキツネくん。夜に彫ってるの……あれ、みんなに、見せてくれませんか。
- キツネくんが、冬のあいだ、夜ごとに彫っていたのは、小さな木の名札でした。
- アナグマぼくの鉛筆だ……耳に挟んでるところまで。
- タヌキぼくのは、新聞……帽子じゃ、ないんだ。
- キツネ帽子は、順番だから。
- リスこれ……みんなが何をしてるか、全部知ってないと、彫れないよ。
- リス橋だって、同じでしょう。板も、縄も、杭も、つなげて見せられるのは……谷で、キツネくんくらいだよ。
- キツネぼくのは……何を彫ればいいか、まだ、わからなくて。
- キツネハリネズミさんは、川下の組を出るとき……辛くなかったですか。
- ハリネズミ辛かったわよ。長く立っていた台所だもの。
- ハリネズミでもね、残っていても、きっと、どこか辛かったと思うの。
- キツネ……教える役、半分だけ、やってみようと思う。試しに。
- リス半分?
- キツネ七日に一日だけ。だめだったら、また考える。……彫るのも、続ける。
- タヌキ夜は、やらない、じゃなかった?
- キツネ……夕方に、少しだけ。
- キツネまず……板の色を、見てみよう。三つ、あるでしょう。
- リスどうだった?
- キツネ……半分、うまくいった。縄の結び方は、ぼくのほうが、迷った。
- アナグマじゃあ、来週は、もう半分ですね!
- 晩秋に越してきた家で、八人は、初めての春を迎えました。
- ハリネズミ今日は、ぶつからなかったわね。
- クマ……半年、かかった。
